回想シーンでご飯3杯いける

ザリガニの鳴くところの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
4.0
タイトルからスリラーっぽい作風をイメージするけど、実際は「きみに読む物語」辺りのニコラス・スパークス原作物に近い恋愛中心の物語。そして、'60年代のアメリカの田舎町を舞台にした死体の話という点で、大雑把ではあるけど「スタンド・バイ・ミー」に似た世界観を持つ。

本編に入った途端に映し出される湿地帯の風景と鳥達の生活、そして、川の流れが生む優しい水の音で、一気に作品世界に引き込まれるので、タイトルに騙されたというようなネガティヴな印象は無い。

殺人事件の被告人として法廷に立つ事になった主人公の過去が明かされる構成になっているが、その過去は決して恵まれたものでは無い物の、冒頭の美しい映像もあって、彼女がこの地で生きていく事を決意した心情も充分に理解できる作りになっている。

封建的な当時の社会と、その中で育まれる若者の人間性。テイラー・スウィフトの音楽が似合う感じだと思っていたら、エンディングで彼女の曲が流れた。

僕のFilmarksのタイムラインでは、タイトルのミスリードを理解しつつ、恋愛物としての側面(いや本筋か)をしっかり見極め、平均(このレビューを書いている時点で3.8)以上のスコアを付けている方が多く、さすが皆さん良い鑑賞眼を持っていらっしゃると感心しきり。本作のように、派手さは無いけど、美しくて沁みる映画を大切にしていきたい。