幽斎

アメリカン・レフュジーの幽斎のレビュー・感想・評価

アメリカン・レフュジー(2021年製作の映画)
3.6
アメリカで大恐慌が発生、主人公グレッグは自宅に強盗が襲撃してくる中で、隣人サムの地下シェルターへと避難。しかし、家長サムの情けを得るには、自分達が役に立つ事を証明しなければ為らない。シェルター内の人間関係は悪化の一途を辿る。AmazonPrimeVideoで鑑賞。

レビュー済のカツレツこと(笑)「湖畔の家」と同じく、プラムハウス製作。最近のブラムハウスは経営方針が変わり、映画よりもロスに有るインタラクティブなお化け屋敷Blumhouse of Horrors、作家にオリジナルのホラーやスリラー小説を書かせるBlumhouse Books。テレビも複数のメディアと契約。もう、昔の様に低予算映画で新たな才能を発掘するイメージとは程遠い。

新生BlumhouseTelevisionが製作したTVムービー。プレミアム・ケーブルネットワークEpixへの専売作品。他にも10作品がエントリー、日本で見る機会も増えるだろう。アメリカのジャケットには上にEpixのロゴが有るが、日本では消されてる。原題「American Refugee」直訳するとアメリカ難民だが、正式には亡命者。隠語で「落人」とも言う。

プロットはアメリカの2極化した人種差別と言う、すっかり見飽きた光景。例えば傑作スリラー「パージ」シリーズの様に群像劇、ミステリーで言えばグランド・ホテル形式で立体的に描いてこそ活きる。TVムービーなので、そんな予算は無く2家族に単純化して地下に閉じ込めた訳だが、暑苦しいだけでフォーカスも定まらない。

私は毎日仕事帰りにアメリカのニュースをリアルタイムで見て、其処で得た情報が、この映画のレビューでも活かされるが、黒人はインテリで常識人、サム一家を始めとする白人は略奪を繰り返すダメ人間。と言うテンプレはいい加減見飽きたと言うか、今のアメリカを正しく投影してない。本当にアメリカ人が作ったのかと、疑いたく成る程、現実から乖離してる。同じワープアでも、犯罪率は圧倒的に黒人が多い。

レビュー済「キャンディマン」古い都市伝説ホラーを現代アートを多用したモダン・スリラーへ変質。同じく黒人差別を描いてるが、私の様にスリラーとして高く評価する派と同時に、ホラー・ファンは怖くないと酷評。人種問題は時代に合わせたオブラートで包んだ物言いでなければ人々には響かない。一方的に迫害される描き方こそ時代遅れ。見てる方も説教されてる気分で不愉快しか残らない。

途中でソウ思ったのか最後で謎の軌道修正を図り、別な意味でアンビバレンツな結末を迎える。スケールが異なるが、違う民族を強引に1つの国に仕立てたEUにも見える。もう、誰かをヒーローに祭り上げる為の悪役はその役割を終えてる。テーマは悪くないが、それをエンタメに昇華出来ない無名監督の演出力の無さが残念でしかない。

人種問題をストレートに描いた社会派スリラー。俳優の演技は悪くないので、お暇なら。
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