たらこパスタ

EO イーオーのたらこパスタのネタバレレビュー・内容・結末

EO イーオー(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

主人公のロバ、EOのみつめる世界から人間同士の関わりあいや自然の流動を魅力的な音と光を乗せて描かれていました!

EOの視点が大きな比重を占める本作ですが、EOが何を見据えながら・放浪したのかという点に関して余白があるように思い、これがどうもわからないままであることが個人的に好きな点のひとつです!
冒頭の赤い光が印象的なカサンドラとの思い出をEOは度々思い出すように見えたのですが、徐々にEOの進行は光の刺激への反射という側面があるようにも思えたのです。それは、赤い光の中のbigdogみたいな四足歩行ロボットへの変身のようなイメージや作中で度々用いられるメタリックで無機的な音色がよりそう思わせたのかもしれないです。
作中を通してEOの主観は直接接続的な形では提示されず、不連続なシーンがその可能性を示唆するように構成されているため余白が十分にありました。その余白に観ていると自然に巡らせてしまう想像がEOの視点を俯瞰と主観(みたいに鑑賞者から思える視点)の間で揺らがせ、映る世界に疾走感と浮遊感があったように感じました。
また、作中でそうであったようにこの余白の存在は他者にいいように利用されてしまう可能性でもあり、いつ致命的な展開に急転回してもおかしくない綱渡りをして歩く緊張感がずっとありました。

また、なんと言ってもロバのEOが魅力的!
朴訥とした感じがあり、大きな黒目がめちゃくちゃ黒い。EOの横顔が大写しになる瞬間はそこに特定の感情は見出されず、神秘的ですらあった!
一方で時折どうも人間と重ねて見えてしまうところもあり、それは窓から馬の集団をみつめる背中が少し小さなEOだったり、人の輪から離れぽつねんと佇んでいるとことだったり、哀愁を見出してしまうような感じでそれも魅力的です。
EOを観ていると幼少期にすごく大事にして連れ回していたお気に入りのものを無くしてしまった時の苦しくて悲しい気持ちを懐かしさと共に思い出す のと似ている気持ちになることがたまにあった

先述した冒頭のシーンですが、かなりすきだった!カサンドラとEOのペアが印象的な赤い光りで浮かび上がるサーカスで演目を行う様子は、2人の間に存在する心象を可視化したような印象があり、親密さと主観性を感じました。そして時間の感覚が夢心地になって没入が加速していくその時にそれを一気に断ち切り客席の様子とそこにある現実の時間の流れをぶつけられる緊張感...!!!
この流れは本編でその後も多くあり、夢心地がぐしゃっとクラッシュされる緊張感と突き放し、そして乾いたユーモアがとても魅力的でした。

また、ビジュアルと音にも非常に求心力があり、有機的なものと無機的なものの相互作用がとても印象的でした!
木々や水、動物たちなどの有機的な質感と無機質めな人工物を光が媒介してスペクタクルに混合され、調和や不協和音を構成していたように感じました。
光から電子なども連想され、意識や機械などにも連想が広がっていき、観ていてとても面白かったです。

Jerzy Skolimowski監督のお誕生日に鑑賞しました㊗️
たらこパスタ

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