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EO イーオーのいののレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
4.3
ロクでもなく全然わかってない監督(失礼)が同じ内容で撮ったとしたら、悲惨極まりないものになっただろうなと思う。でもこれは、いうまでもないことなのかもしれないけど、その真逆をいっている。めっっちゃ攻めてる映像で、格好良すぎる映像でもあって、しかも堂々とした風格で “文句言わせねーぞ”感もある(わたしの感じ方がヘンなのかも)。監督が誰なのかを知らずに観たら、新進気鋭の早熟な天才だと思ったかもしれない。『DEEP END』の監督でもあるイエジー・スコリモフスキは85歳(2024年1月現在)とのこと。本当に凄いと思う。


まぶしい赤は命そのもので、子宮でもあり女性への思いでもあり、愛撫されたときの至福の感情でもあるのだろう。窓が鉄格子になっている車にEOが乗せられているとき、車外では馬たちが疾走する(でもその馬たちも結局はつながれる)。森では、蜘蛛が何本も一遍に輝く糸を出し(ているように見える)、梟は鋭い眼光で森をくまなく支配している(ように見える)。こんな怖い梟みたことない。怪我を負ったEOが虫型音楽プレイヤー(なんと表現したらよいのかわからないけどそのようにみえた。カマキリみたいに)のような形態で早歩きするアイディアはどうやって生まれたの? クリクリした瞳のEOだったり、すっきり顔のEOだったり。3疋まではわかったけれど、もっと多く演じていたことはエンドクレジットで知ったこと。ユペール様と義理の息子、頬にあてた手だけでその関係も見せちゃうんだものね


EOの表情や行動や状況から、鑑賞者は読み取りたいように読み取っているだけだ。受け取りたいように受け取っている。でもわたしたちは、ヒトに対しても同じことをしていると思う。人間なんて。エラソーなヤツに対して、ひょいと蹴とばしたりするEO。お姉さんに対する思慕を募らせ、自分を縛ろうとするところからの脱出や跳躍をはかろうとする。これは反骨精神を抱えた少年の物語のようにも感じるし、同時に、大国にいいようにされてきたポーランドそのものをあらわしているようにも感じる。強制収容所をあらわしているのかな、と思う映像もあった。


*イーオーとイーヨー:鳴き声の"eeyore"に由来しているらしい
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