いやらしいという意味でなく(もちろんその要素もあるが)、こちらの予想をはるかに上回る「変態」な映画だった。
ファム・ファタル(男を破滅に導く女)のようで、それだけではない。
冒頭の取り調べシーンから、色気満載のようだが、妖艶なだけではない。
それは、子作りのためなのか、やたら「強壮」を仕掛けてくる主人公の妻と、触れられそうでできないタン・ウェイとの対比でわかる。
切なくて、いじらしいというより強い意志で行動する女性だった。
「別れる決心」という言葉にも、うまくだまされ、気持ち良かった。さすが、パク・チャヌク監督だ。
主人公の警部が手掛けてきた事件の、現場写真もグロテスクなようで独特の美学がある。眼球とか、かすかな傷とか。監督の趣味だろう。
そして、風景。坂道に、入り組んだ小路に、高低差のある屋根や屋上、丘に小さな山に、崖まで。いろいろな風景を盛り込んで、雑多な感じはしない。
プロットもよく考えられていて、音と映像も、スマホを通したものと、現実のもの(つまり、ここでは映画のカメラを通したものだが)が、交錯して流れてくるあたりも巧い。
いろいろ振り返るほどに、凄い映画だと感じてくる。ハリウッドや日本の映画とは全く異なる文法で展開するため、少しも目が離せないし、いやー久々にいい映画体験をした。