よしや

クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのよしやのレビュー・感想・評価

3.4
『人類の進化の黙想』それ以上でも以下でもない映画。長いキャリア通してクローネンバーグが悟るやはり「身体」というテーマ。
クローネンバーグらしい近未来的ながら極めて人体的な構造物が暗闇でヌメヌメと存在を放ち、人間たちはボソボソと話している。構造物は近未来の顔つきなのにとても使いにくそうでやはりクローネンバーグの頭には近未来といえ非人間的なSF感はないのだなと

機械サポート会社が仕事がなくなるから進化推進派を暗殺してる設定はとても人間的で好きだった。クローネンバーグの描く身体進化はヴィゴ・モーテンセンの体調みても分かる通り身体的苦痛と不快を伴い、人間的。無敵、全能感として描かれてやすいSF群とは一線を画すのが興味深い

結末は加齢など人間の自然な変化とプラスチック食べるなど環境に適応する人工的進化の対比、あくまでも人間の進化は身体に結びついており人工的な加工、アップデートではないというメッセージを感じた

賛否両論という割にはそれほど鮮烈な映像は少なくエンターテイメント性の高い作品を生み出してきたクローネンバーグには物足りないぐらいただ思想が垂れ流される本当に黙想という感じ。怪奇さ、革新性、衝撃は正直薄く、よく言えば集大成、悪く言えば焼き直し感しか感じない
見どころはヴィゴ・モーテンセンの服装が黒基調のアルチザン系でかっこいいくらいか
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