よしや

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のよしやのレビュー・感想・評価

4.5
端的に言って素晴らしい映画。“Little women”という古典を現代的な視点を入れつつ鮮やかな構成でアップデートしている。
邦題が酷すぎて本当に損をしている映画でもある。

監督グレタの古典解釈と再構築がとにかく有象無象のリメイク群と一線を画す。なぜ今このリメイクをしないといけないのか、を作中に示すことの出来る作品は少ない。多くの場合、作品の認知度が高く作れば売れるから、ちょっと目新しくしたいから程度。

グレタは原作者オルコットの考えを組み入れながらより現代的で自立した女性の在り方を提示してくれる。つまりそれは結婚が最高のフィナーレとは限らない、キャリア的な優先も選択肢にあるということ。
この見せ方がとにかく上手い。主人公のジョーに原作者オルコットをなぞり若草物語を俯瞰的に見せ自伝のような構成に仕上げており、極上の深みを演出。

原作では直線的であった時間の流れをジョーが幼少期を回想する構成に変え、それに現代時間がオーバーラップする複雑かつ処理が難しい構成。これは完全に監督の腕の良さ。
この再構成で物語はメリハリが生まれ、過去と現在が対比されることで余分な説明はなく感情は深く描写出来ている。
特にメグの猩紅熱のシーンは圧巻で映画表現ならでは情念の描き方に思わず拍手してしまう。

原作の印象的なエピソードをそのままに散りばめながらも弱かったメグやエイミーのエピソードを補完し4姉妹全員に厚みを持たせるなど余念がない。
原作そのまま生かす所と変える所の匙加減が絶妙。
俳優陣はみな素晴らしいが特に4女エイミー演じたフローレンス・ピューの演技は光った。ティモシー ・シャラメは裕福で顔も良いがどこか内向的でナイーヴな青年をやらせればこの年代なら並ぶ人はいないだろう。

古典ゆえに説明的な部分は最小限に抑え、構成を練り直したことで無駄が落ちて、欲しいシーンに重点を置けたことでジョーの結婚まで話を入れてオリジナルシーンも加えてと満足のいくボリュームに仕上がった。

古典の古典である理由を再確認させてくれる一作と言っていい
よしや

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