さいごん

希望と絶望 その涙を誰も知らないのさいごんのレビュー・感想・評価

3.9
日向坂46のドキュメンタリー。
どっぷりとハマっているわけではないが、深夜の番組を録画して見ている程度には好きだったりする。
とは言え自分よりも嫁さんの方がハマっているので連れられる形で鑑賞。

感想としては凄く現代っぽいアイドルドキュメンタリーだったなと思う。
目標であった東京ドーム公演が今年行われたわけだけど、作りとしては開催決定から始まり公演の舞台映像をクライマックスに持ってきた王道な作り。
というかコロナ禍での延期、休業していたセンターの東京ドームでの復帰等、表面上の出来事だけ取り出しても物語として成り立つレベルなのでこの構成以外は考えられないでしょう。

そこにたどり着くまでの過程で描かれるのはAKBのドキュメンタリーで描かれていたような過酷なまでのアイドルの裏側。
ただ、ぶっ倒れる寸前まで戦い続けている本人達には申し訳ないけれども、ドキュメンタリー映画として見た時にはもう斬新さは感じられない。
正直これで終わっていたらどうかなと思っていたと思うんだけど、面白いのはここから。

前述したクライマックスのライブシーンに向かうにつれてそういうアイドルの持つ負の部分みたいなものは無くなっていくような描写なのです。
言っちゃえば作り話、美談に着地していく。
ドキュメンタリーというものをどう捉えるかにはよるんだけど、個人的にはこの部分がこの映画の1番良いところであると思ったし、最初に書いた現代らしいと感じた理由。

AKBの総選挙のような「アイドルの戦い」を面白がっていた時代はとっくに過ぎていて、今の時代が求めているのは「その先にあるもの」だと思っている。
それが陽の部分を押し出した日向坂46が躍進している理由だと思うし、だからこそ本作のラストは嘘かもしれないけれども綺麗事で良いと思うわけだ。

また面白いのはクライマックスのライブシーンはドキュメンタリー映画として取り上げるには異常に長い。
それが何故かと考えると言い方は悪いかもしれないけれどもステージの上での彼女達自身が実は1番綺麗事を体現しているからだと思う。
でもやっぱりそれがアイドルとしての正しい在り方だなとも思うわけで。

...と書きつつも映画冒頭とラストでキャプテンがここまで書いた事と対になる発言をしていて、それがこの映画に深みを与えているのも好ましいところ。
さいごん

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