'50~'60年代のミュージカル映画は、創成期ならではの野心に溢れていて面白い。今作は思い切ってダンスに比重を置いている。ミュージカルのもうひとつの要素である歌はやや抑え目。更に台詞にも重きを置いていないので、近年のバランスの取れたミュージカル映画に慣れた目で見ると取っ付きは良くないのかもしれない。
しかし、ダンスで登場人物の感情を表現する試みはなかなか強烈。ダンス=楽しい、ばかりではなく、怒りや悲しみも表現していく。これ、ダンスに熱中している人が見れば目からうろこではないだろうか。
その野心に感化された映像作家も多かったのだろう。パッと見ただけで「ラ・ラ・ランド」や、韓国の「スウィング・キッズ」の元ネタを発見できた。そして、何と言ってもマイケル・ジャクソン「Beat It」のMVがまんま本作のオマージュだったとは! ほぼ全編がセットでの撮影らしく、ドラマティックなライティングも見所だ。