翼

ザ・メニューの翼のレビュー・感想・評価

ザ・メニュー(2022年製作の映画)
4.1
course must go on.
コースは全てにおいて優先される。
シェフはサイコパスだけど料理人として矜持と尊厳があるのが良いね。狂気の中に秩序がある。その法則を見出し、ハンバーガーショップで下積みした彼のルーツを知りえた彼女だけが脱出できたとも取れるし、もともと招かれざる客でシェフのレシピにない食材だったから彼女だけがコースから弾かれたとも取れる。後者の解釈がシェフの気狂いが一気通貫されていいな。

こだわり抜いた料理も結局は金持ちの余興、見栄を張る為の手段。美食家が有り難がるのは情報だし、消費されるアートを嘆く過激派ってことよね。
レストランが批評家の悪評レビューで潰されて復讐だーって割とありきたりな動機であの狂気に帰着するには弱い気がしており、それを信仰する「YES.CHEF!」たちは何を崇拝してたんだろう?
あのレストランには真に料理を楽しんでいる人は一人もいないわけで、様は本当にあの料理がうまくてシェフがカリスマ料理人であるという下拵えがやや弱く感じる。自殺志願者たちに料理を仕込ませた、の方が狂気としては面白いかも。

大層な蘊蓄や驕りや世界観その全てをクソくらえとチーズバーガーの袋で汚れた口を拭う様に痺れる。
翼