みーやん

カラオケ行こ!のみーやんのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
3.5
劇場でポスターをみてフーンそういう映画も公開するんですかハイハイと流していた作品でした。キャッチコピーもビジュアルも予告編もピンとこなかったし。なのですがアトロクの映画評で宇多丸師匠がかなり褒めていたこと、とくに「大阪・ヤクザ・中学生・カラオケ・コメディーという要素だけ並べてみたらいくらでも今時の邦画でありがちなレベルの面白くなさになってもおかしくないのに、今作は絶妙なチューニングでちゃんとイイ映画に仕上がってる」みたいな評価に非常に説得力を感じたこと、座組を知ってみれば脚本の野木亜希子はドラマの重版出来や小瀧兄弟と四苦八苦・映画の犬王あたり面白かったし、監督の山下敦弘といえば自分の「音楽ものランキング邦画編」で上位に入っているリンダリンダリンダと味園ユニバースを撮ってるしということで、ホホウそれなら面白いってことじゃないかと劇場で鑑賞することに。綾野剛は最後まで行くのときもよかったしね。

原作未読につきどこまでが原作にもある面白さでどこが映画オリジナル要素なのかはわからないのですが、ただ音楽モノとなるとやっぱり平面で絵と字だけで読む漫画と実際に音が鳴って歌声が聞こえてくる映画とでは明らかに後者の方が立体的に迫ってくるでしょうし、大きな魅力なのではないでしょうか。そりゃ失敗すれば映画の方が大惨事になるかもしれませんがそこは大丈夫でしたよ。家のシーンでピアノの劇伴が流れてきたと思ったらそのままシーンが変わって実は合唱部が練習する曲のイントロだったことがわかるとか、そういう音をからめた繋ぎ方も映画ならではのセンスの良さがあったし。
ただ音楽やスポーツが絡む映画といえばつらいこと予想外なことを乗り越えて訓練して最後にその成果がきっちり観客も共有できてああよかったよかったってなるのが王道ですが(コーダ愛のうたとかロッキーとか)、そういうキッチリスッキリハッキリした落とし前みたいなのを当然のように期待される方がいたら、そこはちょっと違う方向に話が転がるという心の準備をお願いしたいところです。とはいえケイコ目を澄ませてなんかもボクシングの試合のシーンは決して多くないし頑張って練習して勝利をおさめてナンボみたいな話ではないし、それでもちゃんとすっごく心に残る素晴らしい作品になってますしね。いろんな切り口に挑戦して成果を出しているのがイマドキのシーンってことなんでしょうね。

北陸在住ながら大阪住まいが長くてコトバ含めて基本的なOSは大阪バージョンを搭載している身なのですが、それでも大阪弁のやりとりは間の良さ含めてすごく面白かったです。あとで調べてオール関東ロケと知ってびっくりしました。

先述のとおり原作は未読なのですが、ストーリーについて知らないまま鑑賞する方が楽しいと思うので、同じ未読組で原作にも興味ある方がいるならまず映画を先に観るのがいいんじゃないでしょうか。

原作といえば後から調べて知りましたが「ファミレス行こ!」という続編があるんですね。今回のカラオケ大会騒動から4年後、大学生になった聡実くんが深夜のファミレスでバイトをしていろんな人と関わりあいになっていくっていう話らしく、そこで個性的なキャラクターたちの一人としてヤクザの狂児も再登場するとのこと。であればこの作品の撮影からきっちり4年待ったうえで同じメンツ(スタッフも含め)で映画化したら面白くなるんじゃないかなーと思うのですがどうでしょう。そのためにも今作でしっかり興行収入があがるのに越したことないと思うので、ぜひみなさま劇場で鑑賞していただければ。きっと満足してもらえると思いますよ!
みーやん

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