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ひみつのなっちゃん。のPikKaのレビュー・感想・評価

ひみつのなっちゃん。(2023年製作の映画)
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バージン、モリリン、ズブ子の3人が、ドラァグクイーン仲間の “なっちゃん” の突然の死によって、なっちゃんの秘密を家族に隠し通しながら葬儀に出席するために岐阜に向かう束の間の旅を描いた物語。

ロードムービー系ならば私の大好きなフランスのゲイばかりの水球チームのことを描いた作品のような雰囲気かなとか、予告編やポスターなどからも期待大にして観に行きました。

おおまかな話の流れは良いし、ロケ地も良いし、なによりも俳優さんの演技も、もちろん最高と思うんです。

滝藤賢一さん演じるバージン。
指先まで意識が張り巡らされながらも流れるように自然な所作、ふとした瞬間の目元だけでもしっかり魅せる演技、目には見えなくとも纏っている雰囲気、間合い、余白、余韻すべてに魅了された。
肩まである髪をゆるくひとつに結ってる浴衣姿も好きですし、喪服にサングラス姿も素敵でした。

渡部さんは可愛らしさと美しさとかっこよさで見惚れました。
所作も自然でしたしドラァグクイーン姿はまたグッと変わって、その差のインパクトも見事で、踊る場面も楽しかったです。

前野さんの賑やかムードメーカーキャラも好きだけど、終始テンション高く大声で喚く場面が多くて耳が少し疲れてしまう場面も(^^;;

秘密主義者だったなっちゃん故に長くそばにいても知らないことが多すぎたことで右往左往する3人と、最後にはその秘密を共有する人との秘密による展開は見事だったなぁ。
隠さず自分らしく表現して生きていくことは大事だけど、時には敢えて秘密のままにしておいてもいいほうがいいこともある。

秘密好きななっちゃんとお母さんの繋がりを感じました。

松原智恵子さんの醸し出す独特のおっとり感や変わらない可愛らしさにワクワク。
シリアスからコメディ、バラエティまで幅広い松原さんの現在のお姿、演技を観ることができたのも嬉しい。

バージンさんのドラァグクイーン姿や抱えている想いや、なっちゃんの生前の姿、郡上での風景をもっとじっくり見たかったとか思うところもいくつかあるけれど、それすらも秘密主義ななっちゃんを巡る世界観らしいとも思えるし、コンパクトや秘密を共有する演出は素敵だったなぁ。

うーんと思うところは、
郡上でお世話になった家ではモリリンとズブ子がドラァグクイーンとしての姿をさらけ出して皆の前で踊るのに、なっちゃんの家では必死に隠そうとしているところ。

それゆえのハプニングで笑わせる場面は楽しいのですが、あくまでもなっちゃんの秘密を隠し通して葬儀に出るのが本来の目的。
この前後が少々矛盾というか勿体無いなぁとも。


最後は自分たちらしくショーをする3人を観たかったというのは少しあります。
本筋には絡まないところででも…エンドロール中の画面とかででも3人がドラァグクイーンとして踊ったりする風景とかでも。
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