PikKa

ムーランのPikKaのレビュー・感想・評価

ムーラン(2020年製作の映画)
-
必ずしもオリジナルのままにする必要はないですし同じ描き方をするだけなら意味がないし実写版として世界観が広がらないと思う。

アニメ版にはアニメ版だからこその、そして実写版には実写版だからこその良さがあります。
どちらが勝るとか劣るとかじゃなくて、これはこれで良かった。

個としての生き方が認められず、女なんだからこうあるべきという固定観念や押し付け、他の多くの人と違うのは異常だなどという差別や迫害によって生きづらさを感じている人々は現実の世界でも昔からいます。

多様性が叫ばれる昨今の世の中。
本来なら多様性や違いを認めてだなんて、わざわざいう必要がないほどにボーダレスな世の中になってほしい。

そんな状況を生身の人間が演じるからこその感情表現やシリアス感、リアリティが増しています。
ここまでドラマのある魅せ方ならばミュージカル要素やムーシュやクリキーという存在を打ち消し、不死鳥に投影した描写も好きです。

あの不死鳥は実在するわけではないしムーラン以外には見えていないからこその、精神的な象徴。
ライオンキングでいうところの、自信をなくし進むべき道を見失っているシンバのもとに水辺にあらわれたムファサのような感じ。
そこに実在はしないけれど、己の存在や進むべき道、やるべきことを気づかせて自信を与えてくれる象徴や支え。

リウ・イーフェイは映画公開前の政治的発言で物議を醸しましたが、作品や演技は別物として見てほしいなと思います。

中国では子どもから大人までが知っている木蘭の伝説。
そしてディズニーアニメとして今なお根強い人気で世界中にファンがいるムーランの実写版。
その主人公を演じるという重圧と覚悟。
ハードなトレーニングを積み、ムーランとともに歩んだリウ。
彼女が体現したムーランは素晴らしかったです。

コン・リー演じる魔女も素晴らしかったので、そのエピソードをもう少し見たかった。
ムーランと魔女のような人は時代や出会い方が違えば良き関係になれたのではと寂しくもありますね。
劇中で魔女が選んだ結末にも胸が熱くなります。
PikKa

PikKa