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宮松と山下のmityのレビュー・感想・評価

宮松と山下(2022年製作の映画)
3.5
作品を観てみたくて、観てみた。

斬られて、撃たれて、矢を放たれて。死んでは起き上がり、起き上がってはまた死ぬから、死ぬために起き上がってるんだと思った、役名なきエキストラ俳優の宮松。

仕事を終えて夕飯を食べにお店に入る宮松。仕事を終えて恋人の待つ家に帰る宮松。ロープウェイの仕事をする宮松。突然殺され、突然セットから出る宮松の姿を観ながら、宮松の日常は一体どこにあるんだろうかと混乱した。過去の記憶のないまま生きることは、現実とフィクションの狭間にいるような感覚なのかもしれない。

本棚に並べられている薄い台本。その中に宮松の姿はあっても、誰の記憶にも残らない。でも、誰でもない誰かになってその一瞬を生きている宮松は、満足そうにみえた。だから、宮松と山下の境界線が揺らいだ時、果たしてそれは“良い事”なのだろうかと思った。

静かな静かなこの映画。ほとんど台詞はなく、起伏もない。それでもこの映画に退屈を感じなかったのは、目の動き、輝き、その様子だけで、もしかしてとこちらに思わせる演技が素晴らしかったからだと思う。


#124_2022
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