ずけし67

Pearl パールのずけし67のレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.5
前作の『X』は若者グループが無惨に殺されていく、いい感じに分かりやすいスラッシャー系のエログロホラーであったのに対して、本作は『X』の前日譚となる老婆の殺人鬼パールの若かりし日、その生い立ちを語ることに焦点を当てた作りの作品になっておりました。

が… ミア・ゴスが前作でわざわざ一人二役している、つまりマキシーンとパールを重ね合わせ、実際、抑圧された生活やスターになることを夢見る姿など共通点を持たせるあたり、3部作を通して語りたい何かがあるのでしょうが、そんな意味深なメタファーに満ちた構成が災いしてか?いわゆるホラーな描写が激減してしまったのは残念なところ。

惨殺シーンやゴアシーンに依らずとも、シリアルキラーが誕生する過程や秘話でもって心理的にジワジワと追い詰める、そんな恐怖で震え上がらせてくれていたら、ホラー作品としてもう少し楽しめたと思うのだけど…

更に言うと、殺人鬼パールの誕生(開眼)を描いた前日譚であるにも関わらず、本作を観ても「なるほど!」と膝を打とうにも空振りしてしまう感じでイマイチ『X』のパール婆さんに繋がってこないし、何より夫のハワードに至っては何故そうなったのか?全く繋がってこないところもモヤっとポイントでした。

とはいえ、オーディションのダンスシーンは言葉では言い表せない妙な気持ち悪さがあったし、何と言ってもあの独白、長台詞・長回しのパールの独白シーン、あの自問自答とも言える独白によってシリアルキラーとして半分開きかけだったのが完全に開眼し「私はこれでいいんだ」と納得し自分の居場所を見つけてしまう、その瞬間を目の前で見せられているようでゾクゾクして良かったです。

そして噂の笑顔のエンドロールも良かったですが、流れる涙に血走った瞳、あれはずっと瞬きしないからそうなったんじゃないの?なんて言ったら失礼かな、いやミア・ゴスの見事な顔芸はあっぱれでありました。

さて、続く3作目はマキシーンのその後の物語であろうことは想像がつくのですが、やっぱホラーは怖がらせてナンボなので、メタファーや伏線回収もさることながら、グロゴアや残虐描写も景気よくド派手にやって締めくくって欲しいなと思ったのでありました。
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