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三銃士のBaadのレビュー・感想・評価

三銃士(1973年製作の映画)
5.0
十代の頃劇場で二度見てから、折りをみては見返しているこの作品、久しぶりにDVDで見てみました。

この時代、映画は低調と言われたのですが、その中で唯一楽しかったのが、オールスターキャストのコスチュームプレイ。その中の成功作といえば、『オリエント急行殺人事件』とこの『三銃士』『四銃士』二部作でしょう。

やはりいいです。今から作ろうとしても、デュマの三銃士のシリーズの映画化、これ以上の物は望めないと思います。

一番気に入っている部分は主演の四人の銃士を演じるイギリス人俳優たちのセリフ回しがリズミカルで素晴らしいこと。しかもポルトスを演じるフランク・フィンレイ以外の3人は同時代のアメリカ人スターより遥かに色っぽい。ルイ13世役のフランスのジャン=ピエール・カッセルも含めると正に目の保養。原作はフランスとはいえこの時代フランスでは此処まで動けるキャストを集める事は無理と思われるので、このキャスティングはベストと言ってよいのでは?

今見ると、全体的にずいぶんと寄り道の多い脚本なのですが、テンポがいいのと音楽の付け方がよいので、長く感じません。その上、多少下品とも思える生活感のある演出がかえってルイ14世の時代より前のヨーロッパの荒削りさを上手に見せています。修道院での戦いのシーンとか、ダルタニアンの従者が肉を食べているシーン等はいつ見ても楽しい。宮廷でのパーティーのシーン等は面白さ優先で派手に作っている部分もあるのでしょうが、それ以外の部分での「原作のまま」と思わせる美術や考証の確かさもこのシリーズの魅力です。

女優陣ではフェイ・ダナウェイが珍しく綺麗で楽しそうに演じているのですが、ラクウェル・ウェルチはちとミスキャストかな、と思うものの、上手くこなしています。では替わりに誰を?と言われても思いつきません。ボナシュー夫人って、誰でも出来るようでいて意外に難しい役なのかも知れません。

本来は同じ作品に納めるはずだった『四銃士』の部分は原作では歴史小説色が強くなる部分でもあるので、結果的には分けて正解でしょう。むしろ、何故一本の企画として通したかの方が不可解で、ちょっと、詳細を知りたい気もします。

(やはり楽しい 2012/8/21記)
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