『El gran movimiento』では、そんな鉱山の負の歴史を纏っている。フィルムの粗さが茹だるように暑いボリビアの街を捉えていく。街の中心では、鉱山労働者がデモを行なっている。この地に若者エルダーがやってくる。鉱夫として復職するため、都市にやってきた。しかし、彼は都会の熱気に打ちのめされて気分が悪そうだ。なんとか市場で木箱を運ぶ仕事を斡旋してもらうが、あまり体調が良くないように見える。酒が彼の痛みを和らげている。そんな中、山から浮浪者のような男マックスが降りてくる。市場の人は、「お前のことはもう信用できない。」とあしらう。彼の正体は呪術師であり、エルダーの病を治そうとする。
冒頭のラパスを映したショットに象徴されるように、都市としてのラパスはこの映画ではまるで不気味な生き物のように映される。(ここで、歪曲したガラスへの反射により車の直線移動が不気味な動きとなるショットは、同じく不気味な都市の変容を捉えたツァイ・ミンリャン『The Skywalk Is Gone』と共通する) マックス含めた自然としてのラパスに生きる人々もまた、別個の生き物として不気味なオーラを纏って捉えられる。それに対して、都市に住む人々は非常に淡白で均一的に撮られる。無機物であるはずの都市が生き物のように撮られるのに対して、そこに生きる人々は無機物のように撮られている。