凛

福田村事件の凛のレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.0
パンフレットが売り切れていて俳優さんの名前など一部よく分かりませんが。

私の亡くなった祖母は東京市神田で関東大震災に遭っている。生きるか死ぬか、毎日食べること、家の再建など、不安の中でやることは山積みだったと思う。

福田村事件が起こったのは、少し離れた地域。
直接震災の被害には遭ってないけど、〜らしいとか〜だそうだと伝え聞いたデマに踊らされたような気がする。
大正のこの時代は、日露戦争や朝鮮併合などを経て、外国人と接する機会が増えていた。
しかし、日本人は明確に日本人かそれ以外かを区別し、外国人にも日本語を強要していた。

映画の中でも、狭い村で助け合って暮らさなくてはいけない人達、戦争から帰り軍隊式の倫理観を振りかざすもの、朝鮮で理不尽を目撃して帰国したもの、とまとまっているようで、どこか歪なバランスを取っている。

今になっても日本の人はアジアの国の人をどことなく「下」に見る傾向があり、当時は激しい差別感情があったことは想像にかたくない。

不安に苛まれた集団心理は、9.11後のアメリカのイスラム系移民に対する暴行や嫌がらせとも同じで、自分と異質なものを排斥しようとする。

この作品だけですべてを語れるわけではないし、日本人を殺したから問題になり、朝鮮人や被差別人種なら問題がないというわけでもない。

人間の弱さや誰かと同じ行動をし、責任を他人に押し付けたい小市民の感情の一端だと思っている。

後半はとても気分が悪いので、積極的にまた観たいとは思わないが、こういう過去があったことは多くの人に知って欲しい。
凛