らら

正欲のららのネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

・現代を生きる人間は観ておくべき映画だと思った。
多様性って、普通って、一体何なんですかね?

・本来「普通」とはこの世界に生きる存在の集合の中には見出せないものであり、各々の感覚や感情として「普通」ではないからあり得ないとされるものはない。しかし、社会構造を成り立たせるための「普通(マジョリティとも言える)」は曖昧に存在している。この相反する二つの事実の軋轢が、物語全体を通して強く感じられた。

・この世に存在してはいけない感情はないが、もしその感情通りに行動することが許されたら、作中にもあったように性犯罪も罷り通ることになってしまう。一方で、この世に存在する一個人の感覚を社会における「普通」に嵌めて理解しようとすると、これも作中にあったように冤罪が罷り通ってしまうような場合もある。
結局、当事者同士に合意があるか否かという点が罪か否かを分けるのではないかと思ったが、何を持って合意とするのかという点も、また難しい。特に子供が巻きこまれる犯罪の場合などは、周囲の大人が子供の感情や当事者同士の合意を超えて阻止しなければいけない場面もある。「普通」に守られることもあるのだ。

・稲垣吾郎が演じる検事と妻が大喧嘩をするシーンでは、両者が両者にとって正しいことを主張しており、確かにどちらも間違えたことは言っていない。このような場合、互いに相手との向き合い方や伝え方を変えることで話し合いができるか否か大きく変わると思った。
話が脱線するが、互いの違いについて話し合うことができると、考え方が違う相手とも関係を築いていけるのかもしれないと思った。

・地方都市と東京周辺の暮らしが対比的でリアルだった。地方都市の方が生き方の枠が狭まっているが、その分秩序を乱す存在が抑圧されて治安が良くなっているという側面が見えた。東京郊外にも稲垣吾郎たちのような典型的な核家族像というものがあるが、地方都市で共有される治安の良い生き方の方が生活の中で抜け出せる瞬間が閉ざされていて根深いと思った。
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