はる

ウィッシュのはるのレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
4.0
これは好きな作品。
普段からディズニー作品群に触れ続けてきたわけでもなかったが、それでも「100周年」ということへのシンプルな敬意は感じている。それは今作がやはり「よく出来ている」と感じたからだし、「よくこれをやったな」と感じたことも大きい。

事前に共同監督の一人である Fawn Veerasunthorn についての記事を読んで関心を持ったことと、主人公の歌唱はアリアナ・デボーズだと知って観ることにしていた。そういう態度の観客にとっては、まずその辺りでそれなりに満足度の高い作品になっていると思う。
そして「This Wish」という主題歌の良い意味でのイマイチ感が(とても好きな曲ですよ)、今作にまつわる製作のトーンでもあるのかと。「『ディズニー作品について』の作品」というような入れ子の構造をとりながら、おおむね意外性のない仕上がりにしたと思えるからだ。

だがしかし、というところがある。それはやはり "Wish" の捉え方になっていて、あの王国での扱われ方についてのことを考えると、いろいろ見方は分かれそうだ。
そもそも、冒頭の王国の成り立ちから現状が紹介される時点で「駄目じゃん」となるし、その通りのことが劇中で起こっていく。そしてラストは、ということなのだけど、 "Wish" のことはいろいろと置き換えられるものなので、作品に強度をもたらしていると感じた。

また、主人公アーシャの「願い」がハッキリと示されていないのも考えさせるところだ。いや「彼女の願いは他者に向けられたもの」という見方をすればいいだけのことなのだけど、いわば具現化したものがあの「スター」なので。そこは面白いんだよね。

あの「スター」をどう受け止めるべきか。最初出てきたときは「うわっ」と声が出そうになったから、そういう人には共感してもらえるのかどうか。あの異形ぶりというか、明らかに特別すぎる、やりすぎ感に驚いてしまった。あの瞬間に「この作品は特別なんだな」と強く感じたし、周年記念作ということを理解した。それが「日本人には馴染みのあるような造形」であることの違和感は漂い続けるのだが。
だからあのキャラクターの製作初期に日本人クリエイターが関わったという事実を知って納得したし、採用されたことのイレギュラーさは興味深い。
まあ、アーシャのラストの成り行きを思えば、それがすべてなのかとも思える。

そういうことを抜きにして、純粋にアニメーションのクオリティにも驚いたし、今回採用された水彩画タッチの落とし込みが個人的に好きなものだった。こういうものを当たり前のようには受け取らないし、そこを楽しむためにもう一度観たいくらい。やはり字幕版で。
はる

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