はる

落下の解剖学のはるのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
ザンドラ・ヒュラーは『約束の宇宙』以来ということになるが、そういえばあの作品でも「この人は(主人公にとって)良い人なのかそれとも」というような雰囲気を出していたよなと思い出す。

それにしても、今年に入ってから観た作品が数珠繋ぎのようにテーマなどで関連性があり、そこでの感じ方がより深まっているように思える。だから、今作の成り行きを観ながら、これは犯罪スリラーというよりもジェンダーのこと、夫婦、家庭のあり方についての物語なのだとわかり、そこからより楽しめた。

今作の面白さというか危うさというべきなのかもしれないが、子どもに託されることの新味があった。しかもその子は視覚障害を抱えているということで、そこでやり過ぎな印象を感じるかどうかは、評価に繋がるだろう。
まあ、パンデミックの期間に監督夫婦が家に篭って書かれた本であることを思えば、その嫌な空気感が影響していると思うべきなのだろう。あの犬を使った演出とかね……。

とは言え、ミロ・マシャド・グラネールくんの演技はとても良かったし、犬のメッシくんも同様に。「あのシーン」はどう撮ったのか、すごく気になりながら観ていたけど、もちろん周到な準備と配慮がなされていたそうだ。

もちろん「真実」がどうであるかは気にはなる。しかしそこを考えても答えはない。結果として、話題になった作家の新作は売れるだろう。だからと言って、あの父親がそれを望んでいたかというと、そうとも思えない。いやはや。

ラストでは、家の主人が変わったことを察したスヌープくんがサンドラの元へ。あれは優しくしているというわけではないはずだ。相応しいラストかと。
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