はる

VESPER/ヴェスパーのはるのレビュー・感想・評価

VESPER/ヴェスパー(2022年製作の映画)
4.0
予告編を少しだけ観て「よし観よう」となり、そして「観て良かった」となる。
「ディストピアで少女が〜」というのはやや定型のようにも思われたのだが、それでも物語の内容として繰り返されるべきものであるとも考えているので、問題ない。

独自性のあるテクノロジー描写が素晴らしく、あの鬱蒼とした世界で何が美しく見えたのかが心に残る。
汚染と再生についてはナウシカのことを当然思い出すことになる。またナウシカはユーラシアの自然が反映されている世界観なので、リトアニアの作家であるクリスティーナ・ブオジーテが、地元の森で撮影すれば何か繋がりを感じるのも無理はない。ただし、より強く思い返されたのは『パンドラの少女 (The Girl with All the Gifts)』のことだったりする。

「リトアニアの女性作家(とフランスのBruno Samper)によるSF」というのもいろいろと製作背景を知りたくなる要因だし、あの特殊な科学体系の設定もユニークでとても興味深く観ていた。なかなか作品についての情報が少ないので、むしろ想像が膨らむ。
あの主人公の父親とリンクしたドローンは、VFXと実際のドローンを併用したものだということで、その実際のドローンの試験をやっている映像を見たが、スタッフたちの作品にかける気持ちが伝わってきて良いなと思った。

こういうちょっとしたガジェットで世界観、テクノロジーの程度を窺う楽しみがこのジャンルにはあるし、その異質さで多少混乱したりするのも悪いことではないのだ。あのドローンの中を知るとさらに興味は増す。
同様にカメリアのことを思うとただただ悲しい。この作品のあとで『哀れなるものたち』を観たときには、思わず彼女のことを思い返してしまった。

ともあれ、ヴェスパーの貫いたものがメッセージになっているし、希望は込められた。
そしてブオジーテさんたちの次の作品もまたあると良いなと思う。
はる

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