ミュージカルとしてのリメイク作が公開予定と知ったのは昨年末。そこでブロードウェイなどでの公演が継続してなされてきたことを初めて知った。
そうであれば、ということで期待をしていたし、素晴らしい作品になったなと思う。映画館の、多少大きめに設定されたであろう音響があればこそだ。
ストーリーラインはある程度記憶に残っていたので、どのようなミュージカルになるのかという関心がまずあった。そして導入から少女たちがクラッピングをしながら木の上で歌っていて、優しい雰囲気が漂う。そこで今作は多少マイルドになるかと思ったりしたが……。
横暴な父親が示され、彼女たちが歌う理由が察せられる。そこでミュージカルというジャンルが採用された意味を知ることになり、ブラックミュージックの成り立ちにも思い至る。この物語がミュージカルになっているのは必然だと言えるだろう。
主演のファンテイジア・バリーノについてはミュージシャン、シンガーとしての輝かしいキャリアを知らなかったので、新鮮な印象だったし、この作品の構成上、地味なものに見えていたのは仕方ないだろう。それゆえの終盤での大爆発があるわけで、思い出しても泣きそうになる。
彼女は実際にブロードウェイ公演でのセリーを経験しているが、だからと言ってこの好演が当然だとは思わない。いや、本当に素晴らしかった。
タラジ・P・ヘンソンやダニエル・ブルックスも見事だったし、主演がここまで霞んでいいのか、とも危ぶんでしまうほどだった。もちろん全体を思えば、それでこその感動があったわけだが。
おそらく『哀れなるものたち』の後で今作を観たという人は少なくないと思うが、まあ何というか重なってしまう要素が多いなと言うよりない。それゆえの思いも生じることになるし、個人的には今年それが数珠繋ぎのように続いているので面白い成り行きだなと。
今作でも “Poor” について考えることになり、それは果たして誰たちだったのかということ。そしてこちらは赦しを得て救われる。そうなることでのメッセージがあるということで、受け止めて考えよう。
