はる

哀れなるものたちのはるのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
今年に入って『ラ・メゾン』『VESPER/ヴェスパー』を観ていたので、この作品の鑑賞にもそれゆえの感情が生じたように思う。そういう巡り合わせはままあるものだけど、なかなかの精度だと思えるので、各配給側の思惑や導きがあったのかと想像するのも楽しい。

ビルドゥングスロマンとしての心地よさがこの奇怪な作品に込められた。そして作中に散りばめられたものはランティモスの過去作のことを思わせ、こだわってあえて提示して過剰に感じられたものが、終盤で収束されて良い着地をしたなと。
もちろん売春宿のことや、そもそもの生命への倫理のことなどはザラついたままだし、まさにそれらが冒頭で挙げた2作との関連性だったりする。これらのモヤモヤの周辺を考えることを求められているというなら、それはそれで構わないのだけど。

それにしてもやはり「エマ・ストーンが素晴らしかった」と言わざるをえない。「そこまでしなくても」が、終わってみれば「欠かれてはならなかった」とさえ思えるものになっている。過剰さについての繰り返しになるが、あのようなテンションが馴染んでいく過程を楽しんでいた。
ベラの衣装の変遷なども同様で、与えられたものから、自ら選んでいくようになる流れの中で、ナチュラルに先鋭的であるのが彼女の個性なのだとわかる。この「ベラの個性」についてはうっかり想像力が働いてしまうが、示されたものを素直に受け止める方が良さそうだ。

そして、「フランケンシュタイン」の作者、メアリ・シェリーについてある程度知っていたことは、今作の鑑賞にとって良かったなと思う。共演者と各キャラクターについてなど触れたいことは沢山あるが、キリがない。
この次もストーン&ランティモスのタッグによる新作が控えているそうで、どうなるかも気になるところ。
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