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フェイブルマンズのiroのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
3.5
ひさしぶりの投稿となります(^^)

結局、スピルバーグはお母さんとの関係をこの作品で描きたかったのだと思う。母の回想、母との思い出。それは甘さだけではないんだけど、スピルバーグにとってはやはり大切なものだったのだと思う。

序盤では両親からの愛情に育まれた少年、サミーが映画への愛に目覚めていく過程を描く。ここまでは王道の流れ。スピルバーグが映画に心揺さぶられる契機となったのが、列車と車の衝突シーンというのはちと癖がありますが。

物語が転調するのは中盤から。祖母を亡くした母を元気付ける為に、サミーは半ば父からの命令で、先日に家族で行ったキャンプ旅行のホームムービーを制作する。

その編集中に知ってしまう、母親のある秘密。これを巡る様々な展開が徐々に物語の中心を占めていく。

年頃の少年だったら、この母親の秘密は許し難いことだと思う。ただサミーは憎悪だけではない。母親を理解しようとするし、またあるいは全てを忘れるかの様に友人達と映画制作に没頭する。

母親を完全に許せているのかは、全編を通して観ても今ひとつ分からない。ただ、全ての物事には意味合いがある、作品中にもそういった内容の台詞があったと記憶してるけど、多くの事を成し遂げたスピルバーグが人生を振り返った時に、少年期の出来事をそう思うことができたということだろう。

母親役を演じたミシェル・ウィリアムズが、オスカーの助演ではなく主演女優賞にノミネートされたのも納得。これはやはり、母の物語だったのね。
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