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あの夜、マイアミでのiroのレビュー・感想・評価

あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)
3.5
元は舞台劇だった作品の映画化、とのこと。4人の著名なアフリカ系米国人の会話に託す形で、人種差別を受ける側にも存在する入り組んだ構造を浮き上がらせる。

特にフィーチャーされるのは、人種問題においてあくまで白人と黒人の対立構図を組み立てようとするマルコムXと、辛い仕打ちを受けながらも白人社会に溶け込むことで社会的成功をつかんだサム・クックの存在。2人の存在が、黒人コミュニティの中も微妙に一枚岩でないことを理解させてくれる。

加えて、NFLスターのジム・ブラウンが持ち出す、肌の色の濃淡の問題。同じアフリカ系でも、ジムに比べてマルコムの肌の色の方が淡い。この辺りも、人間の持つアイデンティティの複雑さを学べたように思う。

ラストで流れる、サム・クックの歌う『ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム』。この作品のハイライトだが、かつてアフリカ系の人々が困難や理不尽と闘ってきた歴史があることを理解しながら、曲のタイトルと掛け合わせて聴くと非常に感慨深い。

残念なことに、この闘いは未だに続いている。しかし希望を失わなければ、成果を得ることは出来るのだろう。それもまた近年のアメリカが教えてくれたことである。
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