疲弊した肉体を引き摺って観たかいがあった。
まず、観客が列車の玩具を買いたくなる冒頭の迫力が堪らぬ！
母親からカメラをプレゼントされる場面も、少年を眼差すレンズが3つあるショットを作り、どのシーンにも動きを付けるのを忘れない、とても幼く怖い映画。
あの監督のあの面接を受けて、慌てて地平線の位置を調整したようなティルトダウンの茶目っ気には心底胸を打たれた。
若い作家でも容易く「大人」に成れてしまう現代で、このお茶目さと巧さを両立出来る作家は、スピルバーグしかいない。
そこに寂しさと凄みがある。
あの兵士役のジョックスに演技指導する場面の背徳感も、堪らないんだよな。
監督も役者も死を経験した事がないはずなのに、手探りで演出や演技をしていく事で役者や演出家を思わぬ地点に導いてしまう映画制作の不気味さがあの明るい砂漠だからこそ漂っていた。
ジョックス視点で砂漠がどう映ったのか？や煙の向こうに消えた彼をどう連れ戻したのか？をはっきり提示しない、魅せる/魅せないの取捨選択が映画の不気味さを、編集の怖さを引き立てている。
全然関係ないんだけど最近マジックマイクシリーズを追っかけ鑑賞した時に感じた、
「テーマ云々よりチャニング・テイタムの腰の動きが頭にこびりついた」は間違っていなかったんだなと。
列車だろうが腰だろうが、その動く様で魅了させたら映画は勝ち。
撮る事の喜びよりも、撮った後の若干展開気まずさと、純真に動きに執着してしまう事の愉しさが集まったような映画だった。
延々とシーン毎に話をしていたい。
