ことぶき

aftersun/アフターサンのことぶきのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.6
20230614 aftersun
 くそー寂しいし苦しいしつらいなって気持ちとこの映画に出会えてよかったって気持ちが戦って後者がギリギリ勝つという具合。映画館にいる人みんなが少なからず、良い気持ちにせよ悪い気持ちにせよ自分の父親のことを考えていたんだろうと思うと、映画体験って不思議だなと思ったりして。
 わたしにとって父親の腕というのは絶対的なものであったしへにゃへにゃなりに父には愛されてきた記憶ばっかりだけど、あの人にとって娘を大切にするということがどういうプロセスで為されていたのかがわたしには分かることはないし。結局は他人なんだろうけど、その他人をこれだけ大事に思うことができたり、逆にものすごく憎んだりできるってすごい性質だなと思う。
 「断片的」というのがこの映画に対する印象で、それは映像にも記憶にも対人関係にも言えることだと思う。何もかもずっと一緒というのは生活を営む限り無理で、もしそれができたとしても完全にわかり合うことができない以上、たぶんいつだって断片を繋ぎ合わせながら人と関わっていくしかないのかな。かもしれない。
 時間が経てば経つほど作用してくるなぁ、つらいけど映画館で見られてよかった。たしか去年の同じような時期に「カモンカモン」を見て、質感の近い、全く違うようなことを考えたのを思い出した。体験や経験は断片的で、でもやっぱりどこかで繋がっているのだから侮れない。
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