ことぶき

グッバイ、レーニン!のことぶきのレビュー・感想・評価

グッバイ、レーニン!(2003年製作の映画)
4.0
20220822
観た。想定していた以上に良かった。
分断と統一の当事者とさまざまな不条理が描かれているわりに変に感情的なわけでもなく、メタ的な視点を提供された気分になるのはなぜだろう。思想賛美でも批判でもなく、現状を飲み込んだ上での「理想像」を語るというのは偏りに目を向けられやすい現代だからこそフラットに受け入れられやすいのかなと思った。扉や部屋、窓など可視化される「分断」のイメージが強いからこそ、そこを超えようとする、あるいは何かから母親を囲おうとする(彼にとっては守ろうとする)アレックスのどうしようもない、ある意味では愚かかもしれない愛情のようなものが痛々しくも温かいのがずるいなと。家族というものの説得力の強い映画だったなと思う。それこそ家族愛の賛美ではなく、それでいて家族というものへの諦めでもない。もう形として残っていないものへ宿る懐かしさや愛しさ、それを否定することはできず抱えていきたいというどうしようもなさには、結構いいスピードで殴られた感じがあった。
生きるにしたって死ぬにしたって、家族だって、誰かのすべてを理解ことはできないのだなと思い知らされた気がする。でも理解する努力から目を逸らすべきではないと思うんだけども、うーん、ムズかしい。
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