ただ愛する妻との約束を守る
ためなのに。
愛する妻の亡骸を故郷に還す
だけなのに。
終わらない戦争と宗教と国境によって、
その約束は果たすことはできなかった。
割れたグラスとこぼれたミルク。
こぼれたミルクは元に戻すことはできない。
それでもムサは金網のフェンスを
乗り越えて愛する妻の故郷へ向かう。
僕が疑問に思ったのは、こんな高齢な人が
いとも簡単に有刺鉄線の金網のフェンスを
突破することができるんだろうか、
ということです。
あくまでも個人的な感想ですが、
フェンスを乗り越えたムサは
ハリメの幻想なのかもしれないと。
普段ハリメは非常に無口で
感情を表さない。
だから、幻想の中で、秘めた感情が
爆発してムサを呼び止めようと
叫んだんじゃないかと。
お父さんもお母さんもいなくなった。
おじいさんはいなくならないで、と。
夢と現実が交錯する感覚。
観終わってからも色々考察してみたくなる
深い作品でした。