べーすべーす

こんにちは、母さんのべーすべーすのレビュー・感想・評価

こんにちは、母さん(2023年製作の映画)
4.3
こんにちは、みなさま。
御年91歳になる山田洋次監督最新作。

なんとまぁ素敵なひと時でした。
山田洋次監督のやさしさがとことん詰まった110分!コロナ禍の中、90歳で本作に取り掛かっていた山田監督のパワフルさに脱帽です。

吉永小百合さんの驚きのキュートさと、永野芽郁さんの弾ける可愛さ、大泉洋さんの際立った洒脱さ。良いキャストが揃っていて、それでいて時代に合わせてブラッシュアップされた下町人情と、現代の問題を混ぜ合わせ、裏切らない職人気質な山田節のにくい演出で物語を最後まで楽しませて頂きました!

世知辛い世の中。笑って、泣いて、それでも前を向きまたやり直す。
普遍的なんだけれども、忙しい毎日を過ごしていると見落としてしまいそうな日々の機微。
家族のこと、仕事のこと、親のこと。
昔のこと、今のこと。
そして、これからのこと。
本作には今のダメな自分に通じるところがいくつかあり(クドカンのところとか)、見ていて共感したり、切なくなったり、それでいてちゃんとおもしろいところだったりと引き込まれていたのもさる事ながら、映画的なストーリィの起伏とか、大胆な省略の仕方、惹きつける美しいカットの見せ方とかは本当勉強になります。
また心を打つ魅力的な台詞の数々に涙が流れました。お煎餅を食べるシーンが本当に沁みました。誰かを心の隙間を満たす様な仕事をしたいです。
多少のファンタジーな社内事情は気になりますが、それを差し引いても、明るく美しい生き様のおばあちゃんと、キビキビ動くできたお孫さん、人生の帰路に立たされた悲しき中年親父たちの哀愁。
ラストの驚きの展開マイナスとマイナスの掛け合いも、また人生。マイナスとマイナスが掛け合うとなぜプラスになるかがわかる作品でした。

それぞれのキャストがまた揃うことがあるのなら、この人達のつづきの人生がどうなったのか見てみたいと願う作品でした。
シリーズ2作目のこんばんは、かあさんとか、いらっしゃい、母さんとか、拝啓、母さんとか、とことんやって欲しいと思うくらい大好きな作品。
着いていきますよ、カントク。

こんな面白い人情劇にめっぽう弱いのでした。山田洋次監督の更なる次回作を楽しみにしております。