べーすべーす

バーニング 劇場版 4Kのべーすべーすのレビュー・感想・評価

バーニング 劇場版 4K(2018年製作の映画)
5.0
なんとも…なんとも、
身を焦がす様な映画体験だった。
年に一度あるかないかの感情の昂り。高揚。
この気持ちをうまく言葉に消化出来ないのがもどかしいほど、儚い作品だった。
バーニング。なんとも皮肉なタイトル。
 感情、テキスト、汚さ、残忍さ、旋律、自然美、エロスと、空白。様々な要素がひとときの中に同時存在出来るのが映画なんだと改めて気付かせてもらった。
特にポスターにもなっているマジックアワーのシーンの美しさは瞼に焼き付いている。

説明の仕方と、メタファーの使い方のバランスが絶妙過ぎて。もっと難解な作品なのかと思っていた。実際の話はシンプルでわかりやすいんだけれども、物語で意図的に隠されている部分部分が見えてくる(実際は見せてなもらえない)と、何故消えてしまったのかがわかった時になんとも切なく寂しかった。
 たまたまだけれど今の現代社会の事件にも通じるものが多過ぎて。ホストの斡旋問題とか、弱者男性、派遣社員放火事件、こう言った問題の根底に流れている社会不安や格差の波。帳尻合わせは悲しいけれど弱い立場のひとの元へ火の粉が降りかかってくる…。それを放っておけばまた新たな怒りの炎が生まれ、その炎は大切だったものを知らず知らずのうちに焼き尽くしていく。
そしてその炎は大きくなり、我が身に帰ってくる。

全ての人がみておもしろいとなる様な陽気な作品ではないけれど、映画的な面白さとは何か?の解答が詰まった作品だという事は間違い無い映画体験だった。心に残った感情が火傷のようにヒリヒリしている。