Jun潤

こんにちは、母さんのJun潤のレビュー・感想・評価

こんにちは、母さん(2023年製作の映画)
3.9
2023.09.01

吉永小百合×大泉洋×永野芽郁×寺尾聰×山田洋次監督・脚本。
今年で御年92歳の現役巨匠、山田洋次監督の最新作。
予告の時点でコッテコテの人情邦画の良い匂いが香ばしいですが、その腕前は果たして衰えることが無いのだろうか、期待です。

大手企業の人事部長として働く神崎昭夫。
大学も入社も一緒だった友人と飲んでも、久しぶりに会う母親に対しても、問題ないかのように振る舞っている。
しかし、会社では希望退職を募り、同期には退職を勧告し、妻とも別居して娘・舞が家出しても自分の家ではなく祖母の家である自分の実家に住み着いている。
しかも母・福江は、ホームレスに対して支援を行う団体の事務局長をしていて、先生と呼んでいる教会の牧師に恋心を抱いていた。
舞台は東京の下町、神崎家の三世代を中心に、仕事、恋愛、親子愛などの人間らしさを描く群像劇。

きょ、巨匠〜!
監督の前作『キネマの神様』と明らかに違うなと思ったのは、まず台詞の中身自体は普通、特にセンスの効いたものでもないのに、間とタイミングが絶妙に良いから普通の日常会話でも聞いていて心地いい。
そしてカメラワーク。
神崎家を映し出す画角が色々とあるのに、パターン化されているために間取りも把握しやすく、画面内に人がいなくても、今家のあのあたりで話しているなと、登場人物の位置がわかるから表情に想いを巡らす余白ができていました。

今作で象徴的に描かれていたのは、福江、昭夫、舞の三世代の価値観の相違とリンクでしょうか。
舞の世代は昭夫の世代から押し付けられた価値観に押しつぶされ、福江の世代からは素敵なギャップを感じ取る。
昭夫の世代はこれまでの人生にケジメをつけ、舞たちの世代は何を考えているのか、親の世代はどんなことを経験してきて今何を思うのか、そして自身のこれからの人生に思いを馳せる。
そして福江の世代は身体が自由に動かず自分の世話もできなくなってそのまま死ぬことを恐れ、今の自分でいつまでいられるのだろう、生い先短い人生をどのように過ごし、最期をどこで迎えるのかを思い悩み、そして息子や孫が困っていたら、自分の経験でもって精一杯の優しさをそそぐ。

トップク芽郁ちゃんに警官芽郁ちゃん、タバコ芽郁ちゃんや社長芽郁ちゃんなどなどきて、ギャル芽郁ちゃんもまた良い。
田中泯さんは何を演じても貫禄がありすぎるのですよ。
加藤ローサなんてまた懐かしい人をお出しなさる。
Jun潤

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