Kachi

春に散るのKachiのレビュー・感想・評価

春に散る(2023年製作の映画)
3.8
通っているジムの割引でお得に鑑賞。

いろんな主題を少しずつ散りばめているため、全体的に散漫な印象を受けた。

・かつてのボクシングジム三羽烏の「老い」とセカンドライフ
・実質母子家庭で育った青年(横浜流星)の母への親孝行
・家のしがらみから解放された若い女性(橋本環奈)の旅立ち

それぞれがどのような着地を見たかと言えば…

・ボクシングジムの三羽烏たちは、結局ボクシングと向き合うことに「生きること」を見つけた
・タイトル戦で勝利した翔吾は、怪我を理由に社会人(ビジネスマン)として再出発することになった(師と仰いだ仁一と同じだ)
・上京した佳菜子は、小さな幸せを見つけた

短い尺で、登場人物たちを描き切ることは難しいが、着地はやや安直だったような気がする(原作がそもそもそうなのだろうけど)。

ボクシング素人から見れば、手に汗握る試合の様子は鬼気迫るものがあったし、この作品のために役者が身体を鍛えたことは、語らずとも分かる。その努力に報いるべく、脚本にもう一工夫入れる余地があったのではないかと、つい思ってしまった。

もう一つ、本作で描かれた二項対立。
考えるボクシングとガムシャラなボクシング

昨今の流れからすれば、前者のスマートさに軍配が上がりそうだが、本作は後者に重きを置いていた。実際、大塚(翔吾の対戦相手)も最初はスマートさが売りだったのに、途中からがむしゃらになってきた笑

これをZ世代・ミレニアル世代vs昭和的価値観として見てしまう。そして、まだまだ昭和的価値観は健在であるというような意図が透けて見えてしまい、ちょっと勿体無い気がした。

作品の話題性や役者の個性の使い方には、文句のつけようがなかったが故に、もう一捻り欲しかったと、つい思ってしまった。
Kachi

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