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ほの蒼き瞳のmaverickのレビュー・感想・評価

ほの蒼き瞳(2022年製作の映画)
4.3
2022年のアメリカ映画。Netflix製作。主演はクリスチャン・ベール。監督は『ファーナス/訣別の朝』『荒野の誓い』に続き3度目のタッグとなるスコット・クーパー。


『ハリー・ポッター』シリーズのダドリー・ダーズリー役で知られるハリー・メリング、『アンチクライスト』のシャルロット・ゲンズブール、『英国王のスピーチ』のティモシー・スポール、『X-ファイル』のジリアン・アンダーソン、『シング・ストリート 未来へのうた』のルーシー・ボイントン、という錚々たる面子による重厚な人間ドラマが本作の魅力である。主人公を演じるクリスチャン・ベールの存在感は圧倒的。さらにはエドガー・アラン・ポーを演じるハリー・メリングも引けを取らず、この二人の奇妙な関係性によるコンビ劇がもう一つの魅力でもある。博打好きで大酒飲み、さらには規律を守らないというエドガー・アラン・ポーの人間性を取り入れた物語も面白い。

クリスチャン・ベール演じる主人公の元刑事、オーガスタス・ランドーに陸軍士官学校内の殺人事件解決の依頼が来る。犠牲者の死は奇妙に満ちたものであった。その奇怪な事件を追うランドーと、協力者のエドガー・アラン・ポー。真実が浮かび上がった時、物語は思いもよらぬ結末を迎える。

重厚な人間ドラマは魅力的であるが、ミステリーとしては少々物足りない出来。「そういう方向性か」という意外性においては面白い。悲しい物語であり、それを強く感じさせる役者陣の熱演は見事である。主人公はランドーであるが、エドガー・アラン・ポーの存在が上手く機能している。陸軍士官学校の話であり、こんな事件が実はあったのかもと思わせる面白い試みではある。だがそうした作品性であるがゆえ、エドガーの存在がランドーより目立ってしまうのは少々いただけない。クリスチャン・ベールは的確に役を表現していてさすがであるが、彼の高い演技力がそこまで活かされていないと感じるのは残念だ。


このキャストにしてはパンチに欠ける。重厚感ある雰囲気は好きだけどね。クリスチャン・ベール好きとしては、彼の重厚な芝居が観れただけでも満足ではある。どんな役柄でも、どんな作品でも安定した存在感なのはさすがだ。次はどんな役で我々を魅了するのか。次回作が待ち遠しい。
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