浅井拓馬TakumaAsai

猿の惑星/キングダムの浅井拓馬TakumaAsaiのネタバレレビュー・内容・結末

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

シンボリックに描かれるシーザーの火葬、えー?そういう英雄譚や伝説の構成による語り継ぎみたいな話やるの?!それは本末転倒じゃない??
と思ったところから数世紀以上の時が経ち、エイプたちはシーザーの歴史を忘れ、または語り継がれ伝説となったその内容は捻じ曲がり、または知らずに暮らすものもいるという具合が早速シリーズらしい温度感ある設定で、
正直前作でリブート3部作がひと段落して、あとは『〜創世記』で消息を経っていたイカルス号がオリジナル版一作目同様の展開を辿っていくのかな...と思ってたところにエイプスの発展にも紆余曲折があるとした今作のベースラインはとても魅力的な提示だった。

それなだけに、後半になるほど対になる退化していなかった人類側の描写が???となる。
プロキシマス・シーザーがヴィランと見せかけて人類が真の敵、かも?て感じでした!みたいな全体の作りが前述の舞台設定と合っていないような、なぜ人間は数世紀もの時間変わらずに生きることができたのか、この作品で猿と人間の対比をそう作ってしまうのはかなりよくない視線なのでは等、見終える頃には作品へのこちらの重心がだいぶ軽くなってしまい、その辺の理屈は後の作品で明かされるとかそういう段取りなのかもしれないですが、こういう話を描きたいんだということよりもこういう驚きを見せたいんだ、が勝ってしまっていて、この作品単体ではあんまり反芻できるものが結果ないように感じてしまった。
丁寧に描かれる中盤までの描写や非常に「人間くさい」プロキシマス・シーザーの人物像を少ない時間の中で描いている点など、素晴らしい部分も多いだけに、作品が言いたい言葉が明らかになってくるに従ってその勢いが窄まってしまうのが残念でした。

凄まじい映像表現と演出が織りなすなか、ラカがノアに「優しくしてやれ」と言う、その眼差し。いつも人でないものが人のために優しくなる役割を担わされてる。その強烈な優しさに涙が出たけど、その涙が行き着く先はこの映画にはなかったように思う。
(あと、ノア、スーナ、アナヤがトンネルの前で肝試しみたいにわー!て騒ぎながら家に帰ってゆく冒頭のあの空気感とかもすごいよかったな...)