ChanpuruPoo

猿の惑星/キングダムのChanpuruPooのネタバレレビュー・内容・結末

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

 人工ウイルスにより人類がほぼ破滅、猿の知能が進化した世界で、猿の英雄シーザーがその生涯を終えて数世代後。もはや人間は姿を消したかに見える世界で暮らすノア(オーウェン・ティーグ)は、幼馴染や家族とともに村で暮らしていたが、ある日人間の女性を追ってきたという武装集団に村を破壊、父を殺されてしまう。捕虜となった仲間を助けるため、彼は旅に出るが…。

 主人公の見た目がシーザーにそっくりなので、最初に予告編を見たときは、また『スター・ウォーズ』シークエルのような蛇足的な血筋の物語になってしまうのかと心配したが、前作から相当な時間が経過した世界を舞台としており、物語としては基本的に完全新規なもので勝負していることに好感を持った。オリジナルシリーズと前3部作のいずれにも敬意をはらいつつフランチャイズの名声に頼りすぎないバランスになっていて、今回も作り手がシリーズに真面目に取り組んだことがわかるのは嬉しい。その上で、新しい主人公たちを紹介する序盤のパート、特に村の儀式のため鳥の卵を採ろうと危険な高所に主人公とその幼馴染の3人が登るシークエンスが良い。クライマックスの水没する施設の中を上に登っていくアクションもそうだが、立体的な空間を活かしたアクションにスリルがある。そして、行動や表情から各キャラクターを手際良く説明し、観客に共感をもたせる演出もテンポが良かった。いつものことだが、限りなくリアルな質感の猿を魅力的なキャラクターとして素直に受け取れてしまうことに驚かされる。
 設定面では、シーザーの物語が既に神話と化しており、悪役がその神話を自らの支配のために利用している点がとても面白いと思った。シーザーの「Apes together strong!」の合言葉が、搾取の肯定のために悪用される場面は皮肉が聞いており、本作の白眉の一つだ。
 また、猿の惑星ならではの“第一声”が発せられる瞬間のエモーションというツボも押さえている。過去作でも"しゃべれないふりをせざるを得ない"というシチュエーションは繰り返し描かれてきたが、今回の声を上げる場面は、助けを求める=ついに相手を信じた、という場面なのが新しい切り口で良かった。
 そして、終盤。全編通じてノアの貴種流離譚や王制への抵抗など様々なストーリーラインが語られていく中で、ノアとメイ(フレイヤ・アーラン)を通じて描かれる異なる種族の共存と対立の物語は複雑な展開を見せる。それでも、裏切った相手に対して、命の危険を犯しながらでももう一度会いに行かずにいられないメイ、そして裏切られた怒りと不信を抱えながらも彼女を許すノア。そのぎこちない対話に託された希望を示す「Important.」の一言、同じ空を見上げるラストシーンがなんだか心に沁みた。
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