ChanpuruPoo

毒娘のChanpuruPooのネタバレレビュー・内容・結末

毒娘(2024年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

新居に越してきた萩乃(佐津川愛美)、篤宏(竹財輝之助)、萌花(植原星空)の3人家族。萌花はとある事情で母を失い、学校には行かずに自宅学習を続けており、父の再婚相手である荻乃とはぎこちないながらも少しずつ距離を縮めつつある。一方、荻乃は妊活や復職のことで葛藤を抱えながらも、一見温和でありながら実は支配的な篤宏の前に、本心を言い出せない日々が続いていた。そんな中、ハサミを持った赤い服の少女・ちーちゃん(伊礼姫奈)が現れたことで、日常に潜んでいた歪みが顕になっていく…。

フェミニズム的なテーマが、ホラージャンルのエンターテイメントの中に織り込まれた作品。自分自身は「理想の父親」のつもりで「よき家族像」を押し付けることで、無自覚に家族を無抑圧する篤宏のキャラクターは、明確に問題のあるものとして描かれる。そしてそれと対象をなす、女性たちの間に生まれる共鳴が多重的に描かれ、男性目線の家族像が相対化されていく。例えば、手を重ねるという描写が、最初は萩乃と薫(内田慈)、そしてクライマックスで萩乃と萌花の間で反復される演出。エンディングで、これまで荻乃を「ママさん」と呼んでいた萌花が彼女を「ママ」ではなく「荻乃さん」と呼ぶシーン(世間や誰かから押し付けられた役割ではなく、相手を一人の人間として向き合ったということだと思う)。萌花とちーちゃんが、橋の下で一緒にジャンクフードを食べる場面の切なくもどこか微笑ましい感じ(世間一般では「悪」とされている側に主人公自身が共鳴し、善悪の境界線が揺らいでいくような作品が自分はとても好きだ。そして、ちーちゃんという難しいキャラクターを成立させた伊礼姫奈と制作陣は凄いと思う)、など。これらをはじめとして、音や色彩、食事など細かい部分の演出に常に工夫が凝らされており、多くのシーンが家の中という限定的なシチュエーションだが、映画的にはむしろとても豊かな作品だと感じた。
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