OASIS

あしたの少女のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

あしたの少女(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

原題は「次のソヒ」という意味のようで、明日も明後日も次々とソヒの様な子が被害に遭っていくのではないかという警鐘を鳴らす。
韓国では一本の映画の存在が制度自体を変革する大きなムーブメントを起こすことも時にはあるのでそういった映画の力というものを感じる作品には敬意を表したい。

学校側は生徒を企業に送り出し就業率を上げて補助金を貰う。
企業側は独自の勤労契約書を作成して高校生だからと正規の給与を払わず労働力のみを搾取する。
生徒自身は望んだ形ではない就職で少ない給料でやる気も出ず心を病んでお酒に逃げたり自死すら選ぶ。
高校生だからという理由で若者だけが損をするような、この現場実習生制度自体への問題提起を強く打ち出した本作は、その後の制度改革にも貢献したそうな。
日本だと体験学習という名目でそういう物自体はあるが、あくまで見学主体なこちらと比べると今作での実習生という立場はあまりにもイメージとかけ離れていてこれは高校生には過酷過ぎるのではないかと思わざるを得ない。

キム・シウンちゃんは目の演技が素敵だった。
うるうるとした目で必死に耐える姿や、ペ・ドゥナのダンスを見守る優しい眼差し等が彼女の繊細さを表現していて素晴らしい。
ペ・ドゥナは冷徹ながらも情に熱い演技で、感情の抑え方と表出の仕方のギャップが素敵だった。
前半部分は事実を基にしながら、後半部分のペ・ドゥナパートは創作ということで、確かにやり方は真っ直ぐ過ぎて考え無しだったし、こんな熱心な刑事はいなかったんだという思いが強くあって作り物感は多少感じる部分もあった。

監督は「私の少女」のチョン・ジュリということでなんとまだ本作が2作目である。
イ・チャンドンの弟子ということで巨匠の風格すら感じさせる静謐さと内に秘めた沸々と湧き上がる激情を演出しており、映画のオープニングとラストのダンスの違いに感嘆。
OASIS

OASIS