リコ

アルテミシアのリコのレビュー・感想・評価

アルテミシア(1997年製作の映画)
3.5
中島京子の『怖い絵』に紹介されている絵画の中でも群を抜いてグロテスクな"ホロフェルネスの首を切るユーディト"
見開かれた眼、飛び散る鮮血はとても中世の絵とは思えないのだが、それを描いたのはうら若き女性画家だったのだから余計に驚く。
アルテミシア・ジェンティレスキ。その彼女の前半生と、その後の人生を揺り動かした恋愛と裁判沙汰を追った伝記映画。

史実上はレイプ裁判の被告と原告である男女を相思相愛の仲として描いたのは、フェミニズムに鈍感だったのか、それとも語り尽くされてきたエピソードを別の視点で描きたかったのか。
とはいえ、二人が惹かれあう過程はちゃんと丁寧に綴られていたし、当時の絵画製作の様子も興味深かった。
そしてアルテミシアを演じる女優さんが可愛らしく、瑞々しい演技。この人の魅力がなければ、たぶんちっとも面白くなかっただろう。
それと、肝心のユーディトの絵が出来上がる動機付けがやはり弱く、史実との齟齬を免れないと思う。

VHSジャケットにはやたら扇情的な写真や文句が並べ立てられていたけれど、自分の芸術とアイデンティティをひたむきに追求するヒロインを描いた至って真摯な映画でした。ビデオ会社は反省しろい。
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