翼

おやすみ オポチュニティの翼のレビュー・感想・評価

おやすみ オポチュニティ(2022年製作の映画)
3.8
90日間のミッション想定を遥かに超え、5262日間のミッションを行ったローバーの映画。
3ヶ月の旅の準備で14年間探査を続けるという事実だけで物語だ。
NASAの宇宙ドキュメンタリーはロジカルな構成で技術進化や科学的なアプローチを説く、みたいな構成になりがちだけど、本作は科学というより敢えてドラマとして描いている。オポチュニティとスピリット。2台のローバーを双子の人格として捉えている想いや熱が伝わってくる。
実際、探査中に起こり得る事象の数々は機械の作動というには説明がつかない感情的な現象で、技術者たちの一喜一憂は映画を見る私たちの感情までもを動かす。その心の交わりがこの探査をよりエモーショナルなドラマに昇華している。
14年間。オポチュニティの火星到達したことをインターンとして見学した彼女が成長し、ミッションに参加し二児の母になるほどの期間。一人で火星で探査を続けたオポチュニティとスピリットが地球に与えた恩恵は計り知れない。いつか火星に水を確認し、移住が実現することが出来るとしたら、この14年間の奇跡がそれを生んだと言っても過言ではないだろう。


宇宙事業に関わる方々の良いところって、ガチガチの理系でバリバリのエリート集団でも、知的なユーモアを欠かさないところ。それが生む有効な関係性が結局は効率化やKPIに繋がることを理解してるんだろう。そういった意味では『オデッセイ』のマットデイモンも素晴らしかった。そのユーモアが生むのは「人々の普遍的な宇宙への興味」だ。
日本人宇宙飛行士で言えば毛利衛さんや野口聡一さんの説く宇宙によって、地球に住む普通の人々が空を見上げて宇宙を想ったり、子供たちが宇宙を夢見たりする。彼らの功績は計り知れない。彼らのようなパイオニアを私は心より尊敬する。
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