NAOKI

オットーという男のNAOKIのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
3.8
歳とって涙腺が緩むなんてよく聞くけれどあれは心が丸く優しくなったせいではなく、単に涙を堪える筋肉が老化してるだけなんだって(笑)

「泣ける映画」「お涙頂戴」なんて言葉が大嫌いで泣きを押し付けてくる映画やそれを有り難がる風潮も気に入らない。
どんな映画でどう泣くかはおれが自分で決める!

ヤバいおれもこの映画のトム・ハンクスみたいに老害クソジジイになりつつあるのかも?(笑)

予告を見る限りそんな「お涙頂戴映画」にしか見えずDVDか配信でいいか…なんて思ってた。

休みの日、用事がキャンセルになって時間が空いて…こんな時は映画映画…と時間を調べると合うのが唯一この「オットーという男」…

トム・ハンクスなのは知っていたが監督マーク・フォースターじゃないか!
「007慰めの報酬」やブラピの「ワールド・ウォーZ」の監督だぁ。おれ大好き…

観始めると家の近所をパトロール…ルールを守らない隣人を怒鳴りつけたり愚痴ったりするトム・ハンクス…
日本にもいるよなぁ「老害クソジジイ」と周りから疎まれる独居老人…

ホームセンターに買い物に行っても自分のナイフで量り売りのロープを勝手に切ってそれがフィート売りではなくヤード売りのために支払いで店員と揉めて責任者出せと騒ぐ…ずっと後ろに並んで待ってる親父がその差額おれが払うからと助け舟を出したつもりが引っ込んでろと一蹴される。

めんどくせ〜(笑)

これ映画の冒頭なんだけど家に帰って来たオットーは買ってきたそのロープを金具で天井に取り付け首吊りの輪っかを作るのだ!

えー!こいつ死のうとしてる!

仰天しました!
もちろん映画冒頭に主人公が死ぬわけないからこの自殺は失敗するんだろうとは思うけどひょっとするとほんとにこれが最後で映画全編死に際の走馬灯とか自殺に至る回想が描かれたりして…なんて思いました。

とにかくこのオットーという男はこの世に愛想を尽かし死のうとしているのです。

首吊り、排気ガス自殺、列車飛び込み、ショットガン自殺、準備万端几帳面なオットーが失敗するはずないのに(笑)
思ってた以上にサスペンスフルな内容でドキドキするし繰り返されるその自殺の顛末がもうブラック・コメディ以外の何物でもなく、めちゃ面白い映画でした。

その過程で新旧の隣人や野良猫や回想シーンと絡む事によってこのオットーが何故こんな事になってしまったのかが分かる仕組みになっていて話が進むにつれ何やらオットーにも変化が…

心温まるハートフルな展開よりサスペンスフルで苦笑いが先行するすごく面白い映画でした!さすがトム・ハンクスとマーク・フォースター監督…見事です。

この映画を観てイーストウッドの「グラントリノ」を連想しました。イーストウッドの集大成であの映画を観た時はイーストウッド死ぬ!と直感したのですがその後10本以上映画撮ってまだ生きてる(笑)
この映画はトムハンクスにとっての「グラン・トリノ」だ!と思いました。
トム・ハンクスはまだ若いからすぐ死ぬとは思わないけど…トム・ハンクス演技の集大成に見えました。

さて映画が終わり明かりが付くともう目を真っ赤に泣き腫らしたおれは恥ずかしくてなかなか通路に立てない状態(笑)

これだからお涙頂戴映画はごめんなんだ。

とても良い映画でした。
NAOKI

NAOKI