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オットーという男のhynonのネタバレレビュー・内容・結末

オットーという男(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

若き日の思い出。
捨てられないモノたち。
差し出した手。
前へ進みたくない気持ち。
亡き妻への想いがひしひしと伝わってきて、何度も涙が出る。

これは喪失の物語ではなく、愛の物語なのだと思う。

見ていると、自分がいなくなってからのオットーの姿をそっと見守る妻の想いさえも感じられる気がする。
楽しかったね。あなたと会えた人生は最高に幸せだった。どうかそんなに悲しまないで。苦しんでいるあなたを見るのはつらい。生きて、幸せになって。と。

自分は幸せだ、と実感するには、いまを生きるしかない。
いま持っているもの、いまあるものの尊さを知り、いまいる人たちと関わって、ささやかな喜びや楽しみ、何気ない優しさに気づくしかない。

オットーは、近隣の人たちと関わり合いながら、いまを生き始める。
妻との思い出を、大切な宝物として抱きながら。
大好きな妻との思い出も、いまあるもののひとつだから。

彼女がこの世からいなくなっても、彼女が存在しなかったことにはならない。
ふたりの幸せな日々は消えはしない。

死後の世界ってあるのか分からないけど、オットーがそこでまた、愛する妻と再会できたらいいなと思う。
きっと、再会できると思う。
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