Cisaraghi

イヌとイタリア人、お断り!/犬とイタリア人お断りのCisaraghiのレビュー・感想・評価

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アルプスを挟んだ二つの国と二つの言葉を生きた、ある家族の歴史。シンプロントンネル(アルプスを貫き、スイスとイタリアを繋ぐトンネル。第1トンネルは1906年、第2トンネルは1921年開通)の建設現場、フランスのダムの建設現場などに、イタリアから貧しい山の民が出稼ぎ労働者として、アルプスを越え、あるいはくぐって、数多く働きに来ていたのだ。児童労働は当たり前で教育もまともに受けられない。こんなヨーロッパの中心とは思えない食うや食わずの貧しいイタリア、フランス人から犬のように見下されていたイタリアがあったなんて。食と文化の豊かさを誇る現在のイタリアのイメージからは想像しにくいが、地方にもよるのだろうか。ニョッキもポレンタも、元は他に食べるものがない貧しい農民の食事だったようだ。

美術品のような完成度の高さを目指していないストップモーションアニメ、というのが珍しかった。ブロッコリーの木、段ボールの材木、角砂糖のレンガ等の安価な材料を使っての撮影、実写の手や足の登場は、美しいとは言えないがアイディアがユニークで温かみがある。かぼちゃの家は、さすがに本物のかぼちゃではない?積み重ねられた栗は何の代わりだろう?
 対照的に山や岩や大地等はリアリズムによって表現されていて本物さながら、土地の少ないアルプスの山に暮らす厳しさと、土地が広く安寧な平地での暮らしとの対比もわかりやすい。どちらも戦争によって脅かされてしまうけれど…。アフリカ戦線に駆り出され、トリポリの前線に送られてベドウィンと戦ったのは、1911年~12年のトルコ=イタリア戦争らしい。レアなイタリア史だ。

「人間を作るのは国ではなく、子供時代」 チェジーラの言葉に深く深く頷いた。実写版だとかなり辛い話になるところが、人形たちによって救われている。みんな同じ顔なのがちょっと辛かった(笑)
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