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ゴジラ-1.0のArts0001のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.3
戦後を舞台にした意味のあるゴジラ

戦中、戦後を舞台にしたゴジラ映画。
時代背景がよく活かされている作品だと思いました。

ゴジラ映画といえばゴジラが出てきたことに対応する人々の群像劇的な魅せ方がこれまで主流だと思います。本作はそこから一歩踏み込み、主人公が戦中に体験した事柄への葛藤とその解決をゴジラ打倒にリンクさせることで、登場人物への共感や映画への没入感がより高まるような作りになっています。

戦争とゴジラを通じて苦悩する主人公ですが、家族や仲間ができ、かつて失望された人間とも協力しながら、必要な算段をつけて解決に導いていく。様々な積み重ねと人間同士のやりとりが極に達するところをゴジラとのラストバトルに重ねる作りが面白いと感じました。

とにかく戦後の使い方が良い。
仕事も家族も失った何も無い主人公ですが、それは日本全体が同じ状態なのです。
何も無い日本に今までのゴジラシリーズの中でも最強クラスのゴジラが攻め込んでくる。
戦後の技術を使ってどう倒すかのロジックをしっかり説明して映画内のリアリティラインをしっかり作る。観客が絶望的状況を感じ、そこから応援させ盛り上げる作りに戦後という背景が活かされていると思いました。

特にゴジラ打倒作戦に使う戦闘機が無いところからの、戦闘機が飛び立つまでのくだりが良い。

そして山崎貴監督独特の演説系演出というか、登場人物にとにかく話をさせる演出も良いところがあった!
先の大戦の人命軽視を背景に、今ゴジラと戦う我々はどうあるべきか?を演説させるんですが、そこは良かったです。
戦後をテーマにした価値があると思いましたし、この演説がラストのあるシーンで深みを持たせる効果が出ていると思います。

最後にすごく良かったところはゴジラを恐ろしく魅せているところです。
今回のゴジラの放射熱線は意図的に核爆発的な描写をしており戦後の恐ろしかった体験を想起させます。
また、ゴジラに対しては小さすぎる船に乗った人々が後ろから追われるシーンはジョーズ的な恐怖を思い起こさせニヤリとしてしまいました。
人々が踏み潰された、吹き飛んだ描写もしっかり魅せる。
こういった絶望演出が全般で上手くいっていたと思います。

全体的にちょっと会話や役者演技の演出が気になるくらいで、ゴジラを見守ってきたものとして安堵もありました。(よろしければ私のシンゴジラ評もご覧ください)
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