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さがすのArts0001のレビュー・感想・評価

さがす(2022年製作の映画)
4.0
話の作り方や演出が○、役者の演技も良い

何の前情報もなく視聴。
面白かったですが、その一言では言い表せない作品だったと思います。

快楽殺人犯とALS患者を看護する夫がすごく嫌な形で接点を持ってしまったことで始まる物語。

人を殺すことって悪いことなのか?という本来あり得ない投げかけを、看護する夫、看護される妻の視点から描かれた時に見ている側の常識が逆転する。そこに甘い言葉で殺人を正当化してくる殺人犯。乗ってしまう夫。

視聴者側の良識を揺さぶられるような話の展開は言葉を選ばずに言うと刺激的なだったと思います。

また、お話のプロットも上記したような話の展開をそのまま明かすのではなく、時系列を入れ替えることで謎がわかるような作りにもなっており、そういった点でも映画らしさを楽しめたと思います。

父の失踪をきっかけとした娘の奔走までは、盛り上がりがそんなに無いのですが。
その裏で父をどのように動いていたかという視点が後々追加されることで面白くなっていきます。父、娘、それぞれの視点が邂逅するところで映画らしい面白さがでている点もグッドでした。

この映画で良かったのは役者もです。佐藤二郎はコメディリリーフが多いのでシリアスものではどんな演技をするのかバランスが気になりましたが、凡庸なおじさん感が良かったですし、いつもの異常なコメディキャラは抑えられていたと思います。

伊東蒼が良かったです。父の失踪をきっかけに様々な感情の揺れが発生する役どころだったと思いますが、担任の先生やシスターに悪態をつくところ、同級生との気だるそうな会話、父との楽しそうな絡み。本当にこんな子いそうだな。という感覚で映画を見れました。

ラストシーンで父に語るセリフもグッとくる。
「わたし、お父ちゃんがしたこと知ってる」
から涙を流すくだりが始まります。会話を続けた最後に親子関係の中で発生する奇妙な笑いに転換させる少し特殊な会話劇もすごく良かったです。
(ピンポンの動きのCG感が気になったけど、話の山場に佐藤二郎の手が止まる演出は最高でしたね)

あと途中で出てくる優しそうなお爺ちゃんの秘密の趣味については、悪ふざけしすぎだろうと思いつつ笑いました。こういうバランスの監督さんなんだなぁ。
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