だいすけ

逆転のトライアングルのだいすけのレビュー・感想・評価

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
4.0
色んな意味で汚い。だけど笑える。明快な社会風刺。ブラックユーモア満載で、趣味がいいとは言い難いが、思わず笑ってしまう。冒頭のファッションショー、ヘビメタと嘔吐のシンクロ、まるで子供のような富豪たち。

冒頭、「モデルにとって大事な才能は?」と問われたモデルの男性の「顔かな」という回答。この答えに映画のほぼ全てがつまっている。そこには、サステナブル、ダイバーシティ、SDGsなど、聞こえのいい綺麗事を利益追求という目的のために並べる昨今の世界の在り方を反映している。

その実情は、腹の内に「汚物」を宿す。なかなか衝撃的なシーンだったが、あれこそ世界の正体ともいえる。

階級社会は農耕社会以来の避けられない構造。時代に最も適応した者がヒエラルキーの頂点に立つ。いまや世界のどこを見ても、イデオロギーによらず貧富の差は必ず見受けられる。ただ、資本主義によって全体の豊かさのレベルが向上していることは疑いようがない。現状の正解は資本主義だと考えれば、ラストはトライアングルが再び逆転する。結局、みな文明社会に復帰する道を選ばざるをえないと思うからだ。

しかしなによりも逆転すると考える根拠は、この世界のいかなる階級社会においても、印象を操作し人を操ることのできる人間が一番の強者からだ。それは資本主義社会であれば世間体の良いブランディングができる大企業であるし、共産主義社会では大衆を扇動できる独裁者である。「インフルエンサー」が最強。
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