rpmu90377

ゴジラ-1.0のrpmu90377のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.0
ゴジラ生誕70周年記念作品。国産のゴジラ作品としては30作目。タイトルの「マイナスワン」は、本作の時代設定(昭和20年から22年まで)が、第1作目よりも前であることによるようだ。

主人公の敷島は、特攻の任務地へ向かう途中、乗っていた零戦が故障したと偽り大戸島の守備隊基地に着陸。そこに現れたゴジラに襲われて守備隊員たちが次々と死んでいく中、自らは難を逃れ、終戦を迎える。焼け野原となった東京の自宅があった場所でたたずむ彼を隣家の主婦が罵倒する。
「自分だけ生きて帰ってきて」 
当時、多くの若者が徴兵され戦死したが、復員した者もあった。彼らの中には無事の帰還を喜ばれるどころか、敷島のように罵倒され精神的なダメージから立ち直れない者もかなりいたと聞く。特に特攻隊員でありながら出撃しなかった者は「特攻崩れ」と呼ばれ一層激しい非難を浴びたらしい。本作では、戦争や災害(ゴジラ)の犠牲となることを免れて自ら生きることを選んだ男が、悔恨の念にさいなまれ続けたあげく、最終的にはゴジラとの戦いに参戦することで人生を精算しようとする姿が描かれている。歴代のゴジラ作品の中に、人間ドラマにこれほど重点を置いた作品はなかっただろう。

迫力に満ちた海上の戦闘シーンは圧巻。敷島たちが乗った木造船がゴジラに追尾されるくだりは、ゴジラの巨大さに圧倒されて手に汗を握った。上陸したゴジラをわざわざ海に引き戻してまで最終決戦の場を海上としたところに、山崎監督の本作での海へのこだわりが受け取れる。大空を戦闘機が疾走し、波しぶきを上げながら艦船が行き交う描写には「永遠の0」や「アルキメデスの大戦」で培われたCG技術が存分に発揮されている。

山崎監督は「ゴジラをいくら自分たちがリアルに創造しても、現実感というのはそれに対する役者のリアクションでしか出せないため、最初から上手な人でやりたい」との意向を示し(wiki)、神木隆之介、吉岡秀隆、佐々木蔵之介など実力派がそれに応えている。それとは裏腹に、いくつか興ざめするシーンがあったのは残念。海上決戦で小さな漁船が多数応援に駆けつけるくだりは蛇足で、ゴジラ消滅後の「敬礼」は意味不明だ。

第一作から使用され続けている伊福部昭の音楽は何回聞いてもわくわくする。子供の時から聞いているせいか、懐かしさからこみ上げてくるものがあった。
rpmu90377

rpmu90377