ただ音楽一家の母に認めて欲しかっただけなのに…毒親の掌返しの見放しと天才美声・新弟子がそうさせた
インド古典音楽民謡とレガシィを主軸として描いていながら象徴的なライティングの数々、幻想が絡む映像、衣装・美術で脱・ボリウッドを図っているかのような踊らない「NEO・ボリウッド」サイコミステリー・音楽映画
インド古典音楽を取り扱った映画といえば、アルフォンソ・キュアロン制作、Netflixボリウッド『夢追い人』の「ラーガ」音楽が独特な"新しいインド映画"を見せてもらいましたが、こちらはさらに古典音楽含め"めっちゃインドしてる"のに、品位・風格のレベルが高い上に"撮り方もかなりアート領域に踏み込んだ"映画になっております。
超絶"歌って踊るマサラ（ボリウッド）ムービー大スキーなスタンス"だけに、それが良いか悪いかは抜きで、"洗練"に限りなく近い「アート映画」なのに"あと一歩"の刺激エッセンスが足りない故に絶賛の評価を留まらせました…
例えるなら、"インド音楽版『ブラック・スワン』"といったタイプの映画でしょうか。
当然皆まで言いませんが、「サイコミステリー」とピンと来ないジャンルとして挙げたように、映像もなかなか凝っていて、"幻想・幻覚・幽玄"風な多様されて絡んできます。
ポスターイメージから勝手に一流になっていくセルフ・ヒューマンドラマなものと『夢追い人』に近しいものを想像していたら、全く違いましたねw
随分と霧だった映像とそこにポッと浮かぶ光の差し方で、インドの風景は人と物の溢れた"俗"っぽい社会映像が普通ですが、この映画は"社会から切り離された"幽世っぽさの幻想感がたっぷりです。
主演のお美しい"西洋顔っぽい"（ハーフ、またはクォーターなのか？）トリプティ・ディムリさん、今回が初主演ではなく、なんとNetflix内ではダークファンタジー・ホラー『ブーブル』でも主演を務めておりましたw
『ブーブル』でも美しいとは思ったはずですが、こんなに西洋人っぽいと思うなんて、印象が結構変わってる証拠ですねw
そして本作を観た後だと、その『ブーブル』も含めての配役に"因果なもの"と嫌な方向で納得してしまうものです…
この主音楽は「ヒンドゥスターニー音楽」という古典音楽で、同じ古典音楽でも歌詞がなく「アァ〜♪」で表現する「ラーガ」と違い、北インドの宮廷音楽として発祥したものらしいです。これも「ラーガ」と「ターラ」に基づいた音楽で、北、南インド古典音楽も即興性があるということから、主人公が歌う曲はあくまで今風の歌詞に載せたRemix音楽ということになるのでしょうか？
当たり前ですが、簡単に「演歌」と並べるには不敬の文字が浮かびそうな奥の深い「インド古典音楽の世界」となるのでしょう（強引極まりないまとめ）
主人公の軽やかでフワフワとしたリズムのような声も素晴らしいですが、似た感じは昔からのボリウッダーなら既視感のある高音かもしれません。が、主人公の疎外感と嫉妬心に苛まれる兄弟弟子となるジャガンの歌声（実際の役者の声如何は知りませんが）は半端なく凄いです。
ここまで突き抜けるハイトーンボイスで歌えるのか？と風格さえ違う歌声のように聴こえ、"場を支配する歌声"という表現がぴったり当てはまります。
要するに"天才"としてとんでもない説得力のある歌声です。この声のありようでこの映画の「音楽映画」たるランクを引き上げたと言っても過言ではありません。
ご一聴あれ。
終わりませんよ？（インド古典音楽論など述べてないのにまた長くなってすまなんだw）
主人公はインド内「ゴールドレコード賞」受賞されるほどの若くしての"国宝級歌手"ですが、見た目も設定的にも20代で成人を迎えてるように、ずっと「少女性」を感じさせるんです。
そこに挙げた"サイコ"が関わってくるわけですが、成長しきれなかった「少女性」の原因は虐待とネグレクトの双方を行使した"毒（母）親"にあります。
彼女の扱い、個人的にはもっと「罪科（苦しみ）を！」と思ってしまうのですがwオチの"真実"についても、「ヒューマンドラマ」としてもっと欲しかったなという所です…
Netflix'sボリウッドの共通項である「フェミニズム（男尊女卑）」についても深く関わってきて、音楽業界に留まらない"枕営業"という「病巣」は勿論インドも歴史で繰り返されてきたのでしょう…
その点についても、描いているのはボリウッドに留まらない"共通認識"な部分なので、"インド独自の"自浄を図るかのような"メッセージ性"も潜ませた描き方なら映像とは別に評価があがるでしょうね。
ボリウッドでは斬新な行為の暗喩をガーゴイルのお口あんぐりなんて「BA○MANかーい!?」てギャグ化してしまうからね？😉
