「男だろ」
「花の名前を知ってると女の子にモテないよ」
「男らしく握手しろ」
「綺麗なお嫁さんと結婚するまではちゃんと育てる」
いくつも大人たちから投げつけられる言葉と態度に、そしてその大人たちを観察して狡猾に立ち回るクラスメイトの子供たちに追い詰められる2人。
特に、2人にある感情を寄せる大人びた少女が不気味だ。自身の色香を心得て立ち回る姿が、是枝裕和の名人芸である子役演出術で際立つ。
坂元裕二の、明確に特定の誰かにメッセージを届けてエンパワメントしようとしている真摯な、『カルテット』にも通じる脚本を、どこまでもプロフェッショナルな技術と瑞々しい感性で撮り切る是枝裕和。
「優れた映画とは、人が真摯に生きたことの証だ」
と言ったのは、前年に『ドライブ・マイ・カー』でカンヌ脚本賞を受賞した濱口竜介だった。
『ドライブ・マイ・カー』や『怪物』のような映画が製作される世界なら、きっと何度だって生まれ変われるはずだろう。